君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第38章 38
「なんかどっと疲れたけど、打ち合わせ始めましょ。まず、アンバサダーの件ね。撮影が明後日に迫っているわけだけど、体調はどう?」
コーヒーのカップとランチパックを抱えて戻ってきた姉鷺は少々お疲れ気味である。
それに比べて龍之介は元気を取り戻していた。
「大丈夫です。けど…体調ですか?」
「過激なことはしないみたいだけど、絡みはあるみたいなの。小鳥遊さん、露出はどこまでOKなの?ちゃんは」
「本人次第とは思ってますけど、これからの事を考えると過度な露出は避けたいです。未成年ですし、事務所として許容できるのは下着までです」
紡の言葉に姉鷺は頷き、絵コンテを渡される。
「ベビードールって奴ですね。可愛い」
「俺は…一応ズボン履いてるんですね」
「上半身は裸ですけどね」
「…上半身裸…!ちゃん!背中見て背中…!」
「背中?背中…あっ!ちょ、失礼します!!」
何かに思い当たった龍之介がに声をかけ、それにまた何か思い当たったが龍之介のシャツをめくり確認。
「…どう?」
「せ、セーフ!!」
「良かったぁ…」
「十さんの背中に何かあったんですか?」
紡の問いかけに、はハッとしてそちらを見る。
「し、試写会の日に十さん背中虫に刺されて!!」
「そ、そう!で、結構掻いちゃったから赤くなってないかなって!」
「なるほど…?」
必死の言い訳の二人に、姉鷺、こっそり額に手を当て溜息である。
「キスマークか爪痕ってことね」
そんな小さな呟きは、周りに聞こえることは無かった。
「で、まぁ衣装はこれとして、海外本部からも見学が来るらしいのよ」
「英語話せません!」
「俺も」
「すみません、私もそこまでは…」
「そこは他に任せるからいいけど。ヘマするんじゃないわよってこと」
なるほどと頷き、二人は顔を見合わせる。
「絡みもあるわよ」
「そこはどんとこいです」
「ん。大丈夫です。十さんなら信頼できますし」
「「ねー」」
微笑みあう二人は実にお似合いだが、一人事情を知っている姉鷺はハラハラしっぱなしである。
「で、そっちはもう何回か打合せしてるから良いとして、ここからは」
バンッと新たな資料を机に置く。
「ちゃんにオファーよ」