君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第36章 36
そう言って車から降りて店に入る。
ほどなくして、カップを二つ持ち戻ってくる。
そのまま助手席にもぐりこめば顔の横にカップを持ち上げ首を傾げる。
「ブラックとカフェオレ、どっちがいい?」
「ブラック貰おうかな」
、カフェラテの方が好きでしょ?
と微笑まれ、うっかり照れてしまう。
やっぱりどう見ても、かっこいいのである。
「…ありがとう」
「うん、じゃあ、出発しようか」
がシートベルトをしたことを確認し、龍之介はサングラスを眼鏡にかけなおして車を発進させる。
軽快に走る車は高速道路をひた走り、海が見えればそのまま下道へと向かう。
はその間龍之介の運転する姿に見入るばかりである。
「運転する俺珍しい?」
「珍しいし、かっこいいし、レア」
「レア?」
「TRIGGERの三人でジャケットとか写ると、九条さん真ん中で横向きで龍くんと八乙女さん映ることが多いでしょ?立ち位置決まってるから、顔の右側ばっかなんだよね、写ってるの」
の言葉に、それはそうかもしれない、と思い当たる。
「なるほど。俺の顔の左側がレアってこと?」
「あとサングラスもね」
「面白い発想だね」
感心したように頷いた後笑う龍之介に、も頷き笑う。
そうこうしている内に、日は完全に沈み、人気のない駐車場へと車は止められた。
「海…」
「俺が考え事したい時に来るとこ。ほとんど人も来なくて、でも海を感じられて…」
「うん、凄く素敵…」
遠くに灯台が見え、その光が時折水面を照らしてくれる。
その瞬きが、とても美しい。
「なら気に入ってくれると思ってた」
海に面した策によりかかるを後ろから抱き締め、龍之介はの首筋に口付ける。
「」
「ん…?」
「が二十歳になったら…」
「うん、する」
龍之介の言葉に、は微笑み龍之介を見上げる。
「俺全部言ってない」
「私も同じ気持ちだもん」
「うん…はっきり言うのは、もう少し後にしようかな」
「ん、そだね」
後ろから抱き締めてくれる龍之介の胸に背を預け、は水面を見る。
ずっとこんな風に平和に過ごせたらいいのに。
そう思いながら、はそっと目を閉じるのであった。