君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第36章 36
「ただいまーっ!」
小鳥遊寮へと戻ってきた。
三月の出迎えがないことから、全員留守なのだと悟る。
環と一織も学校から直接仕事へ行くと言っていたし、IDOLiSH7全員での仕事なのだろう。
「えーと、明日は新しいドラマの打ち合わせと、龍くんと打ち合わせ。その後撮影…これCMかぁ。めちゃくちゃ忙しくはないのかなぁ、頑張ろう」
スケジュール帳を開きながら制服を脱ごうと手をかけるものの、着ていた方が皴になりにくいな?と考える。
「…いやでも、この姿であのマンション入るのリスク高いよな」
高校生であることがまるわかりになる服装は避けた方がいい。
あたかもそこの住人ですよと言わんばかりに入らねばならないのだ。
「うん、着替えていこう。制服は畳もう」
こくりと頷けば、は着替えて荷物を持ち上げそのまま出かけようとしたところに、一織が一人戻ってきた。
「あれ、一織仕事だったよね?おかえり」
「ええ、ちょっと忘れ物が」
「一織にしては珍しい」
「さんは今日オフですよね。どちらへ?」
「京都に住んでる叔母さんがこっちに遊びに来てるから、顔出しに行くの。多分色紙とかめっちゃ書かされる」
「親戚増えますもんね。テレビ出ると」
「三倍くらいになったよ」
くすくす笑いながら呟けば、は一織とすれ違おうとする。
だが、ぐっと腕を掴まれ、それは叶わなかった。
「一織…?」
「さん、貴女…誰の所へ行ってるんですか?」
「え…だから、友達だよ?今日は叔母さんとこだけど」
「…本当に?」
「本当に」
こくりと頷くに、一織は未だ納得しきってはいなさそうだが、掴んだの腕を離す。
「…十さん」
「十さん?」
「十さんと、何かあるんじゃないんですか?」
「共演者だよ。あのドラマがきっかけで共演が増えたけど、一時的なものだろうし」
「…確かに、何かあったら共演は減りますよね」
呟けば、一織は今度こそ納得したようだ。
引き留めてすまないと謝り、に出発を促した。
「いってらっしゃい」
「ん、いってきまーす」
にこりと微笑み、は寮を出る。