君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第32章 32
ドラマの出来は、役者の演技はもちろん、技術側の編集によってさらにいいものになっていることが分かった。
龍之介も、同じグループに演技派の楽がいるために目立たないが、演技力は高い。
それに加えての演技力の高さに、報道陣は圧倒されていた。
演じているはずなのに、がどこにもいない。
画面の中には、泣いて、笑って、恋をしている雅という一人の少女がいた。
が本当に龍之介を愛しているのだと錯覚するほどに、は雅として徹を愛していた。
本編が終わった時点で試写は終わり、割れんばかりの拍手が会場に鳴り響く。
「賞賛の拍手だね」
「徹さんと雅に送られてるんですよ」
微笑みあい、龍之介が立ち上がりに手を差し伸べる。
その手を取りも立ち上がれば、スポットライトに照らされ、後ろに座る観客たちに深く頭を下げた。
『明日放送のドラマ、『愛していても』の主演、ヒロインを務めました、十龍之介さんとさんです。監督、プロデューサー、お二方、壇上へどうぞ』
司会の言葉に頷き、龍之介がエスコートする形で二人は舞台の上へと上がる。
『すっばらしい!の一言でした!映画並みのボリュームじゃないですか?』
「テレビで見られる映画、を目指して撮りました。十くんもさんも、僕の要望以上に熱演してくれて、より良いものになったんじゃないかな!本当に劇場に流しちゃえるんじゃないかな、これ」
「さん、オーディションでは端役での応募だったんですよ。だけど僕も監督も、この子でしか雅を撮りたくない!ってなっちゃって。それで、ヒロイン役としてオファーしました」
監督とプロデューサーの言葉に、は小さく微笑み一礼する。
『十さんはオーディションではなかったんですね』
「そうですね。十くんは軍服が似合いそうという事で決まってました。ヒロイン役がどうしても理想的な子に会えなくて。色んな役のオーディション開いて正解だったよね」
「あのオーディションやらなかったらさんに会えてないからね」