君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第31章 31
「よくそんな予算付いたよね…ここも結構高級ホテルだし」
「スポンサーが中々強いみたいよ。続編も狙ってるみたいだし、しっかり頑張んなさい」
姉鷺の言葉にこくりと頷き、スタッフに案内されるがまま二人はホールの席に案内される。
周りには数日前まで共演していた俳優たちがおり、会釈や挨拶を交わしながら席に着いた。
「打合せ通り、こちらで作品を見て頂いて、その後登壇していただきます。質疑応答の後、写真撮影を行って本日は終了となります」
「はい」
「わかりました」
軽い説明の後、後ろから肩を軽く叩かれ振り向けば、龍之介の同僚役の俳優。
態々離れた席から来たらしい。
「ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
「今夜食事いかない?あ、他にもいろいろな人誘ってるんだけど」
「すみません、明日早いんで、今日は早めに帰ります」
「えー?30分だけでいいからさ!」
ドラマの撮影中から何度か誘いを受けている俳優だが、万理や周りから、アイツには気を付けろと注意されていた為に、も断り続けている。
世間的には正統派ヒーロー系のイケメン俳優と呼ばれ人気ではあるが、ここまで何度も誘われてしまうと警戒心は増すばかりだ。
今回も例のごとくしつこい誘いに、少々引き気味である。
「ちゃん来てくれると盛り上が…」
「ちゃん、俺と打ち合わせって言っていいよ?」
「え、でもあんまり言っちゃダメって…」
龍之介が隣から俳優とを振り向き気味に見て軽く首を傾げる。
「うん、でも後から嘘だったじゃんってなるのもお互い気分良くないだろうし。ですよね?」
「まぁ、ね。なんだ十くんと仕事あるんだ?言ってよー」
「すみません、まだあんまり周りに話しちゃダメって言われてて…」
「じゃ、また今度誘わして!」
最後の言葉には曖昧に笑みを返し、俳優を見送ればは龍之介を見上げる。
「ありがと、龍くん」
「打合せも嘘だけど、一緒にいるのは事実だもんね」
この後はお互い朝までフリーの為、龍之介の元へ行くことになっている。
嘘は言ってない。
「嘘も方便」
「だね」
そう言って顔を見合わせ、くすりと微笑むと龍之介であった。