君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第29章 29
その後も休憩を挟みつつも連続で番宣をこなし、本日予定していた全ての出演を終えた。
一通り緊張しきったのか、些かスッキリとした表情になっていた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です、ホント十さんいてよかったです」
「俺も、ちゃんいたから心強かったよ」
着替えの最中、衝立越しに話す二人は揃って丁寧に衣装をハンガーにかけ、スタイリストに手渡す。
「龍、着替え終わった?」
「姉鷺さん、お疲れ様です。着替え終わりました」
「良かった。ちゃんは?」
「あ、私も終わりました!」
「じゃあ二人とも、ちょっと緊急の打ち合わせよ」
「「え?」」
本来迎えに来るはずでなかった姉鷺に少なからず驚いていれば、合同で打合せすると言われきょとんとする。
もしやもう関係がばれたのか?!と懸念していれば、仕事よ仕事。と心を読んだらしい姉鷺が頷いた。
そんな姉鷺にホッとした様子で、二人はそのまま八乙女プロダクションへと連れられた。
「私入って良いんですか?!」
「まだ完全未発表だからどっかに漏れるわけにいかないのよ。大神君にも伝えてあるしもうすぐ来ると思うから、ちょっと待ってなさい。コーヒーくらい出すから」
「はい。あ、お構いなく…」
姉鷺の先導で会議室に入れば、並んで座らされる。
「まず資料読んでおいて」
「はい、ありがとうございます」
「結構有名な海外ブランドですね、これ」
「私でも知ってる…」
「そう。そこの日本向け広告でのイメージモデルに、二人を起用したいって連絡があったのよ」
「私と十さんがですか?」
「CMとかで知ってくれたんでしょうね。二人のイメージが打ち出したいコンセプトにピッタリらしいの」
資料をスクリーンに映し出し、姉鷺が指差した先に目を向ける。
「純情な淑女を妖艶な貴婦人に…」
「そう、要するに、龍は大人の色気でちゃんを大人の女にする役ってことね」
「大人の女…」
呟きながら二人顔を見合わせ、頬を染める。
つい昨晩、大人にしてしまったばかりである。
そんな二人を見て、姉鷺は目を見開いた。
「あんたたち…まさか…」
わなわなと震えながら口元を押さえる姉鷺に、と龍之介は揃ってがたりと立ち上がる。