君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第229章 229
「おはようございます、さん」
「おはようございます。……?」
早朝4時半。
眠気眼隠せぬ様子でマンションのエントランスへとやってきたは、出迎えた撮影カメラとスタッフに一瞬きょとんと首を傾げた。
「あ、今日から密着取材でしたね!すみません寝ぼけてて!約1週間、宜しくお願いします!」
すぐに密着取材のスタッフだと気付いたはぺこりと頭を下げる。
「、忘れも…の…が、エレベーターの中にあったよ」
コーヒーのタンブラーを持って追いかけてきた龍之介は、の周りのスタッフの姿に足を止める。
これはまずいと一瞬考え、なんとか言い訳を考えた。
「十さん!おはようございます。エレベーターの中に置きっぱなしとか、恥ずかし過ぎるぅ…ありがとうございます!(ありがと、行ってくるね)」
「ちゃんのってすぐ分かったよ。撮影?頑張ってね」
小声で改めて礼を伝えるに微笑み、龍之介はの頭をぽふりと撫でてその場を去る。
「十さん、何しに降りて来たんだろ」
「寝間着っぽかったしな」
の忘れ物を届けに来たのだから、当然用事はそれだけである。
トレーニングに行くのなら着替えるが、エントランスに行くのみだった故にラフが過ぎるパジャマで降りてきていた龍之介に、スタッフは首を傾げ、は冷や汗を何とか押しとどめている状態だ。
「、時間そろそろ」
「あ、はい!では皆さん、宜しくお願いいたします。一旦失礼します!」
どうやら後ろから撮影隊の車が付いてくるようで、はいつも通り万理の運転する車へと乗り込む。
「焦ったぁ。2人揃って撮影入るの忘れてました」
「みたいだねぇ。あの言い訳でスタッフさん納得できたかな?ちょっと苦しく聞こえちゃったけど」
「無理でしょうねぇ…とはいえ、こればっかりは幸いにもTRIGGERはテレビに出られませんから。容赦なくカットされます」
「だね」
まずはドラマの撮影現場。
主役を貰えるようになってから早朝の撮影が増え、近頃のは毎朝4時起きである。
龍之介も一緒に起きてしまうため、そこがかなり申し訳ない。
「ベッド分けた方が良いんだろうけどなぁ…」
「朝から惚気炸裂」
「すみません…」