君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第224章 224
MOP優勝を果たした後も、変わらずTRIGGERは様々な場所でライブハウスでのライブを行っていた。
彼らがすでに枠を取っているライブを今更中止にするわけがない。
地方のファンには喜ばしいが、事情を深く知っていながらもここに1人、寂しさでグダグダな少女がいた。
「っちが死んでるー」
「いぎでる…」
「今回は何泊なんですか?」
「ざんばぐ…」
学校の教室。
手を投げ出した状態で机に突っ伏すに、環と一織が声をかける。
「今何泊目?」
「今夜で2泊目…」
「明後日に帰ってくるんですか」
「あとたった2日じゃないですかって思ったでしょ?!」
「……思ってません」
「その間は思ったろ」
「普段いる3人がいないとこでご飯食べるのどんだけ寂しいと思う?普段7人いるのに1人で食べて寝るの想像してみ?」
ぐったりと突っ伏しているくせに語気だけはやたら強いに、これはまずいと一織は環に目配せする。
「寮くればいいじゃん」
「明日めちゃくちゃ早いんだよー…なんと3時起き」
「うげ」
「4時に出発して5時に現場入り。5時から働けるからって5時に起きればいいわけじゃないことに絶望したのはいつのことやら…」
「だから早朝ロケの時は前日オフが多いんですね」
「午後だけ休みとかね。ありがたい…社長と万理さんに感謝だよー。でも眠い…」
龍くんいないと寝付き悪いのー。と唸る。
「しょーがねぇなー。俺がリュウ兄貴の代わりに一緒に寝てや…」
「ダメだろ!ダメだろそれは!!」
腰に手を当て頷く環の言葉を遮り、話を聞いていた悠が突っ込む。
「あんだよいすみん」
「は…あの、あれだ。アレの彼女なんだろ?」
「言葉に出しづらいからって人の彼氏をアレって言わないでよー」
「一応気使ってやってんのに!?」
「ふふ、でもその気遣いは嬉しいよ。ありがと」
「お、おう…」
頬を掻き、小さく頷く悠を見て一織は溜息をつきながらに視線を向ける。
「…さん、亥清さんまで手玉に取って転がしてるんですか」
「そんなつもりはございません!」
頬を膨らますその表情すら愛らしいが、環は悠を見て目を吊り上げる。
「理に手出したと思ったらっちにまで手出したのよ、いすみん!」
「人聞き悪い事言うな!」