君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第216章 216
そんな万理に笑みを返し、は袖でIDOLiSH7のパフォーマンスを見守るTRIGGERへと視線を向ける。
「でも、彼らにも負けて欲しくないんです」
「…うん、そうだね。特にはそう思うだろうね」
一緒に立って歩き続けてきたから。
でも、どっちも勝って欲しい。
本当な勝敗なんて付けたくない。どちらも、素晴らしいグループなのだから。
だから、TRIGGERもIDOLiSH7も、優勝してほしい。
そんなわがままが許されるのなら…
そう願っていたい。
「私は欲張りなんですよね」
「そうだね」
「…IDOLiSH7も、TRIGGERも、勝ってくれなきゃ嫌。優劣なんてないんですもの」
IDOLiSH7を見つめ、そう呟くも、はそっと目を伏せる。
「でも…ファンは見抜きます」
「え…?」
「IDOLiSH7……特に陸とナギくんが、ファンの為に歌ってない事。何かを抱えている事。私たちが、彼らが、何を見てパフォーマンスしているかを、ファンはあっさり見抜きます」
いつか、天の養父である九条が言っていた。
ファンは鋭いと。すぐに見抜いてしまうと。
いつも愛してくれるからこそ、見てくれているからこそ、些細な変化にもファンは気づきやすい。
「そこを見せないようにするのが、私たちの仕事。そしてファンへの思いやり。だけど…」
「…ホントには鋭いなぁ」
万理も薄々は感じ取っていたのだろうか、じっとステージを見ながら小さく頷く。
「多分、ぱっと見は気付かないかもしれない。でも、今のIDOLiSH7のファンの子たちは、本当に彼らを愛してくれている。更にこの番組の趣旨も」
「Music of people。大衆のための音楽。自分の為に歌っているメンバーがいることに気付いてしまった子たちが、IDOLiSH7に票を投じるかは…」
わかりません。
そう呟き、はそれでも、じっとIDOLiSH7のパフォーマンスを見守るのであった。