君は水面に輝く光【アイドリッシュセブン 十龍之介】
第213章 213
TRIGGERが名古屋へ遠征するその日の朝。
珍しく、龍之介が出発を躊躇していた。
「…本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫!」
「寮いかずにマンションに居るんでしょ?」
「仕事道具とか全部こっちに揃っちゃってるからね」
事件から数週間たった今、が1人になるのは今回がほぼ初めてになるのである。
数日前からずっとその事にそわそわしていた龍之介だが、当日になって心配がピークに達してしまったらしい。
「寮は明日顔出すつもりだけど…」
「俺たちも明日には帰るから、迎え行くまで絶対寮にいて欲しい」
「いやいやいや、ライブで疲れてるのに迎えなんていいからっ」
ふるふると首を振るに、これだけは譲れまいと龍之介も首を振る。
「俺は大丈夫だから。に何かある方が嫌だし怖いよ」
「…私だって龍くんに何かあったら嫌だし怖いよ」
ぎゅう、と龍之介に抱き着きは呟く。
「ちゃんとタクシーで帰るし、タクシー乗るまで見送ってもらうから」
「でも…」
「タクシーもエントランスまで入ってもらうから。龍くんはそこまでお迎えに来て?」
「…わかった…。はぁ、一緒に連れていきたい」
「私も一緒に行きたい。龍くんから離れたくない」
怖いとかではなく、これはただの寂しがりではあるが、それはそれでいじらしくて、ますます連れていきたくなってしまう。
「龍、そろそろ時間」
「うん、先降りてて」
「遅れんなよ」
「天、楽、行ってらっしゃい!楽しんできてね!」
「うん、行ってきます」
「行ってくるな」
見送ってくれるの頭をよしよしと撫で、そっと抱きしめてから天と楽は先に階下へと降りていく。
龍之介もまたを抱き締め、そっと頬を撫でた。
「龍くんもそろそろ行かないと」
「うん…。本当に気を付けて」
「龍くんも気を付けてね。行ってらっしゃい」
「ん、行ってきます」
の顎をそっと掴み、口付けを贈る。
の唇がうっすらと開いたことを感じ取れば、そのまま口付けを深めた。
「っふ、ぁ…ん…」
「…愛してる」
「私も愛してる。大好き。ライブ楽しんできてね?」
「うん、夜に電話するからね」
「ありがとう。行ってらっしゃい」
「行ってきます」