第3章 二人の出会い
(だけど、それを伝えたのは私の筈…。)
何とももどかしい気持ちになったが、菫はぎゅっと拳を握った。
(少しでもあの夜の事を覚えて下さっていたなんて嬉しい限りだわ…。こうしてお話し出来ているだけでも信じられないのに。)
そんな事を思っている菫の目の前で杏寿郎は思い出すように視線を上へ遣っていた。
杏「妹さんも鬼殺隊に属しているのだろうか。」
「いえ…、妹は普通の幸せを手に入れて貰いたかったので自分が入隊に強く反対致しました。もうすぐ嫁ぐ予定でございます。」
杏「そうか!それは目出度いな!!」
その言葉に菫は礼を言うように頭を下げた。
杏寿郎は晴れ晴れとした笑みを向けると湯呑みを置いて立ち上がる。
杏「ではそろそろ鍛錬をしよう!任務に発つ前に腹拵えをしておきたい。宜しく頼む!」
「はい。少なめで宜しいでしょうか。」
杏「うむ!だが俺は人より食べるのでな、五人分は用意しておいて貰いたい!!」
菫は『ごっ…』と言った後慌てて頭を下げた。
「畏まりました。」
杏「うむ!楽しみにしている!!」
杏寿郎はそう言うとすぐに庭へ降り、木刀を構える。
菫は鍛錬の様子を見てみたかったが炊事場へ急いだ。
杏(清水は堅いがさっぱりとした好ましい男だな。上手くやっていけそうで何よりだ。)
そんな事を思いながら木刀を振り上げる。
木刀を握る手に力を込めると杏寿郎は頭の中を空にしてから振り下ろした。