第4章 働きぶり
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(壁の掃除もしたいけれど五人分の食事を作るとなると間に合わないわ…。煤が入らないようによくよく注意しないと。)
菫は心の中で呟きながら竈を覗く。
ちらりと見れば食器にも調理器具にも煤が被っていた。
菫は頭巾の下で口をきゅっと結ぶと気合いを入れ直した。
杏寿郎が任務に備えて早めに鍛錬を切り上げると、縁側に菫が置いたと思われる茶と手拭いが在った。
時間を適切に予想していたのか茶は冷蔵庫から出したばかりのように冷えている。
杏「冷蔵庫の氷は今朝買わなかった筈だが…これは有り難いな。どうやら彼は優秀らしい。」
杏寿郎は嬉しそうに微笑むと居間へと向かった。
杏「よもや…。」
居間へ入った杏寿郎はこれまた適切な時間に並べられた膳を見て薄く口を開いた。
食事からは出来たてである事を主張するかの様に湯気が上っている。
杏寿郎の様子を見て菫は不安になり、体側に手を揃えた上官に対する姿勢のまま眉尻を下げた。
「何か至らない点がありましたら遠慮なさらずに仰って下さいませ。」
淡々とした事務的な口調であったが、それでも不安そうな空気が感じ取れた。
杏寿郎はパッと笑顔を浮かべると菫に目を遣る。