第62章 ※遠い初めての夜
――そうして菫を抱く事に失敗した翌日の晩
杏(今日こそは抱かせて貰おう。)
杏寿郎はそう決意すると、隣の布団に居るどこか緊張した様子の菫を見つめた。
杏「菫、愛して良いか。」
菫は杏寿郎の方を向き、昨日より明確になった問い掛けにこくりと頷いた。
杏寿郎は昨夜同様口付けを繰り返し、そして、恐る恐る腰を撫でた。
すると、今度は触れられる事を覚悟していた為か、菫は身をびくりと震わせただけで制止しなかった。
杏寿郎は喉を鳴らすと、今度はゆっくり驚かせないように胸まで手を滑らせる。
菫を思い遣っての行動だったが、緩く撫でられた体は熱くなってしまった。
少し触れただけで上がってしまう菫の息を感じると、杏寿郎も頭が痺れてどうにかなりそうになる。
杏(…大事にしたい。)
杏寿郎は心の中でそう呟くと、眉を寄せながら優しく胸に触れ、既に浴衣越しに主張している頂を指の背ですりっと撫でた。