第62章 ※遠い初めての夜
「んぅ…。」
杏寿郎は菫が胸を軽く押したのでストップをかけたのだと気が付いたが、宥めるように頭を撫でるだけで口を離さなかった。
すると観念した菫が恐る恐る舌の力を抜く。
そうして二人は拙い動きで舌を絡め、互いを抱き締め、想いを確かめ合った。
そうして深い口付けを繰り返していると、いつだか執拗に耳を触られた時と同じ様に菫の目はとろんとなって息も上がっていく。
「ふあ、…ん…、」
少し口が離れる度に小さく甘い声が漏れる。
それを聞く度に杏寿郎の頭は痺れ、呼吸も乱れていった。
杏「……っは、」
杏寿郎は気持ちが昂ってくると、口付けを繰り返しながら菫の頭脇に肘をついてその身に覆い被さった。
そして左の肘に体重を預け、右手で優しく大事そうに菫の体に触れる。
菫は脇腹から腰までするりとなぞられると小さく体を跳ねさせた。
「ん、」
菫は口付けをされている最中、恥から無意識に何度も杏寿郎の胸を押していた。
今もそうだ。