第62章 ※遠い初めての夜
「…っ」
何度も優しく、何度も角度を変え、慈しむようにそれを繰り返す。
その行為が余りにも優しくて、菫の力は次第に抜けていった。
それを感じ取った杏寿郎は口を離して額を合わせる。
杏「今とても幸せだ。」
そう言いながら頬を優しく撫でられると、菫も頬を赤らめながら微笑んだ。
「……私も幸せです。」
杏寿郎はその返事に心底幸せそうな笑みを返し、再び口付け始めた。
「ふ、…ぅ」
口付けは何度も重ねるうちに長く、水音を含むようになっていった。
そして『そろそろ良いだろう。』と思うと、杏寿郎は菫の薄く開いた口の中に舌を入れた。
「!!」
逃げる菫の舌を優しく撫で、誘うように辛抱強く絡める。