第62章 ※遠い初めての夜
杏寿郎はそんな菫の情けない声に小さく笑みを漏らした。
杏「同じ布団で寝たい。」
菫はその言葉に視線を上げないまま頷く。
そうして杏寿郎は俯く菫の布団に入った。
杏「菫。」
熱を孕む甘い声が菫を呼ぶ。
菫がちらりと視線を上げると、杏寿郎は微笑んでから菫を胸に抱き寄せた。
杏「君に触れても良いだろうか。」
既に触れ合っている今、杏寿郎が言う "触れる" とはもっと違う意味であることは容易に分かる。
菫は耳まで赤くしながらこくりと頷いた。
杏寿郎はそれを認めると体を離し、菫の頬に手を当てて顔を上げさせる。
菫は緊張から眉尻を下げていた。
そして、『耐えられない』というように目を瞑る。
杏寿郎はそんな菫の頬を優しく撫で、そして、ゆっくりと優しく唇を重ねた。