第18章 疎い二人
一方、杏寿郎は将来について話していた際に、菫に『君の様な女性がいれば何も問題はないのだがな!』と言い放った事を度々思い出すようになっていた。
杏(煉獄家の血を、炎柱としての使命を、長男である俺は後世に繋いでいかなければならない。)
そう思うと食後の茶を注ぎ直している菫を見つめた。
杏(………菫さんは『結婚をする意欲が無い。』と話していたな。)
「どうぞ、お待たせ致しました。」
相変わらず堅苦しく、事務的で淡々とした口調ではあるが、声に色がついた事で印象が随分と変わった。
杏「ありがとう!」
杏寿郎は湯呑みを持つと、漠然とした "良くない気持ち" を押し込むように茶を飲んだ。
杏「…うむ!茶も食事も変わらず美味かった!!」
そう言って湯呑みを膳に置くとスッと立ち上がった。
いつもより早いこの昼餉の後には大事な予定がある。
それは半年に一度開かれる柱合会議だ。
―――
「前回は夕方まで掛かったと聞いて拵えました。ご負担で無ければどうぞお持ち下さいませ。」
菫はそう言って様々な味の握り飯が入った風呂敷を遠慮がちに差し出した。