第18章 疎い二人
杏寿郎はパッと目を輝かせると躊躇せずにそれを受け取る。
杏「ありがたい!!俺の腹の虫はなかなか声が大きいのでな!これで同僚に頭を叩かれなくて済む!!」
「……………………はたか、れる…?」
菫の眉が寄ったのを見ると、放っておいた方が良いと判断した杏寿郎は笑い声を上げながら玄関に降りた。
「お、お待ち下さいませ。一体どなたに、」
杏「では行ってくる!!留守は任せたぞ!!!」
そう元気良く言うと、杏寿郎は菫に最後まで言わせずに走り出してしまった。
「……行ってらっしゃいませ。」
菫はそう言い忘れていた事を思い出すと小さく呟いたのだった。
―――
杏「胡蝶!一週間振りだな!!」
杏寿郎は柱合会議の集合場所である屋敷の庭へ行く途中、柱仲間である胡蝶しのぶを見付けて声を掛けた。
し「煉獄さん…。」
笑顔の杏寿郎に対し、振り返ったしのぶは少し複雑そうな顔をしていた。
しのぶは杏寿郎が菫を保護してから杉本の行いを知ったのだ。
し「こんにちは。…清水さんはお元気ですか?」
しのぶは体も杏寿郎の方に向けると微笑みながらそう訊いた。