第60章 初めての宴
杏「………何だろうか。」
菫はじっと余裕の無い杏寿郎を見つめると、目を細めて楽しそうに微笑んだ。
「焦っているのですか?」
その歳下を揶揄うような声色に杏寿郎の頬がカッと熱くなった。
杏「……そうだが、それは君を大事に想っているからだ!君も酔っているとは言え、不用意に男の体に触れては駄目だ!」
「杏寿郎さんはお酒も入っていない時にもっと深く私に触れたわ。」
目元を触っただけで『淫らだ。』と言われた気がした菫は、ついそう言い返してしまった。
杏寿郎は一度固まるとすぐに冷静に戻り、菫の言い分を認めた。
杏「…確かに俺は君にどうこう言える資格が無かった。その点については謝る。だが、俺に触れるなと言ったのは君の為なんだ。それは分かってくれ。」
杏寿郎はそう言うと、未だに自身の袖を掴んで "引き留めている" と思っている菫の上にゆっくりと覆い被さった。