第60章 初めての宴
杏「……水を取ってくる。」
自身を律しながらそう言うとその部屋を出て深く息を吐きながら広間へ向かう。
すると、自身の名が聞こえてきた。
『だから煉獄はそんな事しねェ。』
『分かんねぇって。酔ってる上にもうすぐ自分の物になる女だぜ。』
『あいつの貞操観念はお前と違ってしっかりとしている。』
『意志の強さは私が保証する。』
『だが、据膳食わぬは男の恥とも言うぞ。』
―――スパンッ
杏寿郎は無言で襖を開くとずんずんと進んで菫が使っていた湯呑みを取る。
「「「…………………………。」」」
噂をしていた面々はその様子を黙って見つめた。
杏寿郎は湯呑みに水を注ぐと再び無言で広間を出て振り返り、そして漸く口を開いた。
杏「正直に言うと先程少し理性が揺らいだ!なので皆の意見を聞けて良かった!評価に値する介抱をしてくる!!」
そう宣言すると、今度は静かに襖を閉めた。