第60章 初めての宴
杏(菫はまだ三口しか酒を飲んだ事がないと言っていた。だが成人祝いの席でその量は妙だ。恐らく重國さんに止められたのだろう。となれば角田さんと権田さんを付けたのは、菫の酒の弱さを心配する気持ちもあったからかも知れない。)
杏「舞い上がって少し考えれば分かる事も見えなくなっていた。俺の責任だ。」
そう呟くと菫を横抱きにして立ち上がり、大股で広間を出る。
杏「菫を介抱してくる!きちんと面倒を見るので心配せず飲んで語らっていてくれ!」
その言葉に各々が頷いたのを確認すると、杏寿郎はかつての菫の自室へと向かった。
杏「菫、待たせた。布団を敷いたぞ。」
杏寿郎は菫を布団に寝かせると緩く掛け布団を被せた。
そして少し汗ばんだ額を拭い、無防備な頬を撫でる。
「…ん、」
少し苦しそうな、それでいて艶のある声を聞くと、いけない事をしてしまった気がして手を引っ込めた。