第17章 真実
杏「菫さんは嫌がっているように聞こえたが何故止めなかった。」
杉「…は………、分かって、いらしたんじゃないですか… "清水の" 声。」
菫の心臓がどくんと大きく脈打つ。
杏寿郎は初め、杉本が杏寿郎の屋敷で働いている清水という男の事を、名字が一緒の目の前の女性と間違えていたのだと思った。
しかし、菫は杏寿郎を "炎柱様" と呼んでしまった。
そして、杉本は以前 "蝶屋敷で薬の調合をしていた清水" と旧知の仲だと言っていた。
後退って警戒していた相手に対して咄嗟に様付けをするだろうか。
前職が薬師で、今は杏寿郎の屋敷に仕えていると思われる "清水" が、複数人いる事は有り得るのだろうか。
杏寿郎が真実に辿り着いたのは一瞬だった。
杏「…清水、帰ろう。」
「……………は、い…。」
菫は何も言わない杏寿郎に酷く狼狽えつつ、動揺している杉本から逃げるように杏寿郎の後を追った。