第60章 初めての宴
「…っ」
警戒から少し緊張していた時に頬擦りをされると、菫は小さく肩を跳ねさせる。
それに気が付いているのかいないのか、杏寿郎は何度も愛でるように菫の頭に頬擦りをし、顔を埋めるとそこへ口付けを落とした。
杏寿郎の触れた所全てが熱を持つ。
「杏寿郎さん…。」
杏寿郎は少し不安そうな声にハッとした。
そして、その様な声を出させてしまった事に眉を顰めながら体を離した。
杏「すまない。怖がらせたな。」
「いえ、違うわ…。ただ…、」
杏寿郎は不安そうな声を出した筈の菫がすぐに否定した事に首を傾げる。
すると菫は眉を寄せながら少し俯いた。
「い、以前私は妙な声を出しました。あれを今も尚、恥じております。」
その固い言葉に杏寿郎は思わず笑ってしまった。