第60章 初めての宴
杏「………大丈夫か。」
「はい……。」
強制的に思ったより早く触れ合ってしまった二人は互いに視線を落としつつ、離れる事なく身を寄せ合った。
(熱い。杏寿郎さんの体温だ…。)
菫が恐る恐る手を回すと杏寿郎も応えるように菫を抱き寄せる。
杏「触れたかった。」
菫はシンプルでストレートな言葉に頬を染め、同じ気持ちを伝えるように腕に力を込めた。
それを感じると杏寿郎は愛おしい気持ちを抱きながらも眉を寄せる。
久し振りに感じた菫の体の柔らかさ、そして匂いに青筋も浮かぶ。
杏(………………………もう少し…、)
一方、菫は杏寿郎の息が僅かに上がり、鼓動が不自然に速くなってしまった事に気が付いていた。