第60章 初めての宴
照「お家へ戻られたのですね。」
照子が両親に聞こえないように気を遣って小声を出すと、菫も小声で『はい。』と答えた。
照「良かった…。」
照子はそう言うと泣きそうな笑顔を向けた。
それから夫妻と照子は、杏寿郎と菫が近いうちに祝言を挙げる事を知ると酷く喜んでくれた。
「では、そろそろ買い出しに行かなければならないので…相変わらずゆっくりと時間を取れずすみません。」
菫がそう申し訳無さそうに言うと三人は『また来てくれればそれで良いから』と送り出してくれた。
杏「では買い出しへ行こう!甘露寺も来るので沢山買わなければならないな!!」
「はい!」
二人は微笑み合うと手を握ろうとして固まった。
そして後ろを振り返る。
角「公の場で触れ合うのは…良くないかと…。」
「…そうですね。」
杏「うむ!軽率だったな!菫、何を作るのか訊いても良いだろうか!」
杏寿郎は明るい声を出して気まずい空気を吹き飛ばすと、腕を組みながら先頭を歩き出した。
菫は慌ててそれを追いかける。
「はい!今日はやはり目出度い物を作ろうと思っていまして…、」
そう前置きすると菫は豪華なメニューを述べていったのだった。