第59章 それぞれの
―――そして一週間後、
晴「……うん、完璧…ね。」
針仕事、料理、掃除の手際から始まり、華や茶、書道にお箏などの教養の域までチェックされた菫は、オール満点で母のお墨付きを貰った。
蓮「…お裁縫の練習に戻ります……。」
箏を弾く菫を見に来ていた蓮華はしょんぼりとしながらドアに向かう。
菫はその元気の無い後ろ姿を見て眉尻を下げた。
「杏寿郎さんがお箏を贈って下さったの。それで毎日弾いていたから…だから、決して久し振りに弾いた訳じゃないのよ。練習していなかったらもっと酷い演奏だったわ。」
菫がそうフォローすると蓮華は振り返って目を丸くする。
蓮「お箏を…?」
晴「まあ。」
目を輝かせた二人を見て菫は発言を後悔した。
二人は杏寿郎の話になると異常に喜びしつこくなるのだ。