第59章 それぞれの
槇寿郎は父親らしい柔らかい笑みを浮かべると目を細める。
槇「遅れてしまったが…、自慢の息子が無事に二十歳を迎えられた事を祝って、」
杏寿郎は目を見開いてからパッと明るい笑顔を浮かべた。
杏「乾杯!!」
槇「乾杯。」
槇寿郎がぐいっと一気におちょこを煽ると杏寿郎も真似をして飲み干した。
すると喉がカッと熱くなる。
そして酷く咽てしまった。
そんな珍しい姿を見ると槇寿郎は心配そうに眉尻を下げながら背を擦る。
しかし、次第にその親子らしいやり取りが幸せで尊くて仕方なくなり、温かな笑い声を上げ始めた。
酷く咽てしまった杏寿郎もまた、自身の失態ぶりに笑い声を上げる。
そんな二人をみていた千寿郎は目を細めて微笑んでいた。
千(やっと…やっと、家族になれた…。)
そうして煉獄家は幸せな空気に満たされたのであった。