第59章 それぞれの
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杏「うむ!大変美味かった!!腕を上げたな!!」
夕餉を食べ終わると杏寿郎は千寿郎の料理の腕を褒めた。
食べている最中も褒めちぎっていた為、千寿郎は少し困った様にしながら微笑んでいた。
千「ではつまみを持ってきます。どちらでお飲みになられますか?」
そう問うと槇寿郎は留めるように千寿郎の頭を撫でた。
槇「このまま居間で飲む。千寿郎も居たければ居て良い。」
杏寿郎も同意を示すように微笑みながら頷く。
それを見た千寿郎は『では、お言葉に甘えさせていただきます。』と微笑んだ。
杏寿郎は笑みを消し、真剣な面持ちで徳利を持つと槇寿郎のおちょこに酒を注いでいった。
その小さな小さな器に酒が入ると、杏寿郎は心が満たされ大きな感情に心揺さぶられた。
槇「次はお前の番だな。」
槇寿郎はそう言うと杏寿郎の意識を戻すように頭を撫でる。
すると杏寿郎はハッとしてからおちょこを手に取った。