第59章 それぞれの
杏寿郎は千寿郎に話し掛けられたのを機に、千寿郎の背が伸びた事や今何を勉強しているのかなどを訊き、楽しそうに会話を弾ませた。
槇寿郎はそんな仲睦まじい息子達の様子をぼんやりと見つめる。
槇(本当に良い息子達に育った。少しも曲がる事なく…本当に…。)
そう思うと再び涙が滲んできそうになってしまったのだった。
そうして三人は仲良く買い物へ出掛けた。
幼い頃から馴染みがあるその街を歩くのは久し振りだ。
それ故に少し問題が発生した。
まず、煉獄家は戦国の時代には既に、産屋敷家という強力スポンサーがいる元で鬼狩りを生業にしていた。
つまり、その時代から財を築き、そして家紋を守ってきたとんでもない名家、そして有名人一家なのだ。
更に杏寿郎は背も高ければ髪色も顔立ちもとびきり目立ち、性格も良くて評判だった。
それ故にすぐに近所に住まう知り合いや顔馴染みの店の者に呼び止められたのだ。
杏「すまないが婚約者がいる!!」
そして、娘を嫁にどうかと勧めてくる親も多かった。