第16章 積み重なる日常
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(もっと炎柱様のお役に立ちたい。どうしたら…、)
屋敷に来てから一ヶ月以上経ち、杏寿郎の世話に随分と慣れた菫は新しい悩みを抱えるようになっていた。
(薬学の知識をもっと身につければ…、でも炎柱様に必要なのかしら。)
そんな事を思いながらも家事を済ませてしまった菫は結局、蝶屋敷の書庫から借りてきていた薬学書を開いた。
(健康を補助するお薬なら良いかも知れない。食欲増進…は必要ない。不眠…も違う。虚弱体質ではないし…、)
時間を掛けたが、菫はただ杏寿郎がとても健康体である事を再認識しただけであった。
(……やっぱり炎柱様は凄いわ。では『また作ってくれ!』と仰られていた傷薬だけ用意しよう。)
そう思うと自室の棚から薬用の鍋と瓶や紙袋、ガーゼを取り出し、炊事場へと向かった。