第16章 積み重なる日常
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(よし…。)
油と蝋に生薬の成分を抽出し終えた菫は、鍋の熱を冷ます為に鍋を火から下ろした。
ポケットからハンカチを取り出すともどかしそうに頭巾の中に手を入れて汗を拭っていく。
そして一息つくと手を洗い、そのまま杏寿郎の昼餉を作り始めた。
(………今日も炎柱様はわっしょいと仰るのだろうか。)
菫は頭巾の下で微笑んだ。
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杏「もうここずっと、毎食芋を出してくれているな!嬉しい限りだ!」
杏寿郎は膳を見てそう笑った。
杏「弟もよく出してくれていたんだ。とても懐かしい!」
それを聞いた菫は、以前杏寿郎が『歳が離れた弟がいる。』と話していた事を思い出した。
(暫く会っていらっしゃらないんだ。柱になられて忙しいからかしら。弟さんもきっと優秀な隊士様になられるのだろうな。)
そう思いつつ、菫は何も質問出来なかった。
すると、相槌を打つように頭を下げるだけで何も言わない菫をじっと見ていた杏寿郎が、口角を上げたまま口を開く。
杏「弟は実家に居て、俺は父から『鬼殺隊を辞めなければ家の敷居を跨がせん。』と言われている!なので弟の千寿郎にも会えていない!勿論ずっと帰らないでいるつもりも無いがな!!」
「…………え…、」