第58章 休養―其の弐
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「……圭太さん。」
菫は廊下を歩く途中で圭太の後ろ姿を見付けると声を掛けた。
圭「ああ、菫。まだ話をしていなかったな。」
振り返った圭太は笑っていた。
しかし、明らかに目が赤い。
菫はゆっくり歩み寄ると心配そうに眉尻を下げた。
「橙子さんと許嫁様にご報告して来られたのですか。」
その問いに圭太は微笑みながら頷いた。
圭「鬼舞辻が斃されればすっきりするかと思ったけど、そうでもなかった。墓前に立ったら、」
菫は話が本格的に始まる前に手のひらを前に出して圭太を制した。
「炊事場へ来て下さい。今から杏寿郎さん達のお食事を作るのでそちらでお話し下さい。」
それを聞いた圭太は口を薄く開いて固まったあと、片手で目を覆いながら溜息をついた。
圭「お前なあ…片手間に聞く話か…?心配してんのか、してないのか、どっちなんだよ…。」
そうは言いつつ、菫をよく知る圭太は菫が心から心配してくれている事は分かっていた。
それ故に溜息をつきながらも『心配してるに決まっているわ。』と心外そうに言う菫の頭を撫でると素直に炊事場へ向かったのだった。