第58章 休養―其の弐
―――
「…蟲柱様にお墓参りを勧めましたが、日が傾いてきてしまいましたね……。」
杏「鬼殺隊士は夜目が利く。加えて鬼は出ないし胡蝶は速い。何かしらの事件に巻き込まれることはないだろう。」
菫はその言葉に頷くと病室の戸へ向かった。
「では私は夕餉の準備をして参ります。」
その言葉に継子三人と杏寿郎がパッと明るい笑顔を浮かべる。
朝、昼の食事は、菫が杏寿郎の元を離れなかった為に蝶屋敷提供の物を頂いていた。
それも勿論美味しいのだが、菫はそれぞれの好みに合わせた食事を作る。
それ故にどうしても菫の食事を欲してしまうのだ。
菫は『山盛りだぞ!!』とふんふん鼻息を荒くする伊之助の頭を思わず撫でながら廊下へ出た。
「失礼致します。」
杏「うむ!楽しみに待っている!!」
炭「ありがとうございます!」
善「禰豆子ちゃんの分もよろしくお願いします!!」
菫は善逸を見つめるとにこりと微笑む。
「勿論です。今日は禰豆子様のお誕生日ですもの。」
その言葉に炭治郎と杏寿郎はどこか似た太陽のような笑みを浮かべ、善逸は嬉しそうに笑った。
伊「いいから早くしろよ!!」
「はい。」
菫は善逸と炭治郎が嗜めている声を聞きながら戸を閉めた。
(恋柱様はお食事足りているのかしら…。四人以外の分も作れば恐らく夕餉だけで蝶屋敷の食料は底を尽いてしまう。明日買い足して謝らなければ。)
隊士ファーストの菫は提供者に我慢させるという選択肢を思い付きもしなかったのだった。