第58章 休養―其の弐
行「気が動転していたのだろう。無理もない、まだお前は幼かった。私が化物のように見えたとしても」
沙「違います!!!」
大きな声に行冥は再び沙代の方に顔を向けた。
沙代は近付くと恐る恐る行冥の大きな手を握った。
沙「ずっとずっと、この手が優しい事を知っていました。あの時言った "あの人" とは鬼の事を言っていたんです…先生のことじゃありません…!ごめんなさい…、私…、助けてもらったのに…きちんと説明できなくて……!」
行冥は強い感情のこもった涙声を聞きながら、沙代が何年もの間、ずっとそれを伝えようとしてくれていたのだと感じた。
耀哉伝いに鬼殺隊の存在を知って入隊して以降、ずっとその機会を伺っていたのだろう。
行「…………そうか。」
行冥は静かに、柔らかい声を出した。
―――
蜜「………そんな…、」
一方、そこそこ重症な蜜璃の元には小芭内が見舞いに来ていた。
そして、思いが通じ合ったというのに一緒になる事は勿論、恋仲になる事も拒否された蜜璃は小芭内にたくさんの質問をし、とうとう暗い過去に触れたのだった。
小「だからこの汚い血が」
蜜「なんで…なんでそんな悲しいことを言うの…?伊黒さんは悪いことしてないのに…。」
小「実際、俺の一族は」
蜜「で、でも伊黒さんはしてないのよね…?」
小「来世で」
蜜「私が未婚のままおばあさんになっちゃったら…い、伊黒さんのせいだから…っ!」
蜜璃は小芭内の考えが悲しすぎて涙目になると、そこから猛烈な逆プロポーズを始めた。