第58章 休養―其の弐
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「すぐに考えを変えて下さいました。」
病室に戻って来た菫は笑顔でそう報告した。
杏「そうか!相変わらずだな!!」
杏寿郎の "相変わらず" とは、『相変わらず説得するのが上手だな』ではなく、『相変わらず粘り強いな』という意味だったが、それを理解出来たのは善逸だけであった。
炭「すごいなあ。」
伊「そんな事より、だ!飯係!!」
素直な炭治郎は真っ直ぐ受け取って感心し、伊之助は帰ってきた菫に作ってもらいたい天ぷらの具を伝え始めた。
杏寿郎はそんな賑やかな様子を見て笑みを浮かべながら目を細めた。
杏「君達はこれからどうするんだ。」
そう静かに問うと炭治郎が真っ先に口を開いた。
炭「実は俺の家族の家で皆…俺と禰豆子、善逸、伊之助と住もうという話になっていて…。」
それを聞くと杏寿郎は納得したように頷いた後、少し首を傾げた。
杏「そういえば竈門少女はどうした。人間に戻っていた筈だが…。」
すると善逸が『そうなんですぅ!』と禰豆子の可愛さを力説し始める。
杏寿郎は明るい笑い声を返してその話を流した。
炭「禰豆子は病室を出る前にどこかへ行ってしまっていて…多分カナヲの所だと思うんですが…すみません…。また改めて連れてきます。」
杏「元気なのであれば何も問題はない!だがそうだな、顔を見せてくれるのは嬉しいので待つとしよう!」
炭治郎は杏寿郎の明るい笑顔にパッと表情を明るくさせた。