第58章 休養―其の弐
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「蟲柱様…!」
菫はしのぶを廊下で見つけると息を切らしながら駆け寄った。
しのぶは菫の珍しい姿に目を丸くする。
し「菫さん、一体、」
「花柱様の…お姉様の元へ、ご家族の元へご報告に行って下さいませ。」
菫はしのぶの亡き姉、カナエと在籍期間が被っていた為に彼女の事も知っていた。
しのぶはそれを聞くと静かに首を横に振った。
し「死者が出なかったとはいえ重傷者は山程いるんです。放り出してはいけ」
「蟲柱様。後生です。」
し「ですから、」
「個室にする程重症であった杏寿郎さんを参考に考えれば蟲柱様がそこまでする必要はないかと思われます。」
し「煉獄さんは特別体が丈夫なだけで」
「では他の隊士様で容態が急変しそうなお方はどなたですか。出来る限り私も助力致します。」
しのぶは言葉を被せられ続けると疲れたように溜息をついた。
し「菫さんには正直に言った方がいいようですね。実は…、」
しのぶの話を要約すると、『自分の無力さを恥じるあまり顔を合わせられない』との事だった。