第58章 休養―其の弐
菫は三ヶ所も口付けられると腰を抜かしたようにずるずるとベッド脇に座り込み、布団に顔を埋めて赤い顔を隠してしまった。
杏寿郎はそんな様子を見ると、体を横向きにさせて宥めるように優しく菫の頭を撫でた。
杏「すまなかった。」
菫は優しい声を聞くと少しだけ顔を上げてちらりと杏寿郎を上目遣いに見つめる。
杏「……………。」
杏寿郎は微笑みそうになるのを抑えながらその幼い顔を見つめ返した。
「…踏み止まって下さったのを感じました…なので…、」
菫がそう許してしまえば先程の行為を咎める者は他にいない。
杏(菫の優しさは有り難いが、今は嗜めてくれた方が助かったな。)
杏寿郎はそんな事を思いながらも同じ轍は踏むまいと自身をしっかりと律した。
(杏寿郎さん…眉を寄せてしまっている…。)
杏寿郎が菫を思い遣って頑張っている一方、菫は菫で杏寿郎の心配をしていた。
(かと言って『気にしないで』と言うのも…淫らな気がするし…どうしたら…、)