第57章 闘いを終えて
千「もうその様な事を信じる程幼くはありません!!」
そう怒りつつ、杏寿郎が少なくとも五体満足である事を確認すると少し肩の力を抜く。
そして、菫を見た。
千寿郎は世話をしてくれている隠なのだろうと察し、小さくお辞儀をする。
菫はそれを見ると慌てて深くお辞儀を返した。
杏寿郎はそんな二人を面白がるような笑みを浮かべて見つめている。
千寿郎の後から病室に入って来た槇寿郎も小さく微笑んでいた。
杏「千寿郎、こちらはお前の義姉となる菫さんだ。菫、もう分かっているだろうが弟の千寿郎だ。」
「千寿郎さん、ご紹介の通り杏寿郎さんと婚約させて頂いております清水菫と申します。どうぞ、よろしくお願い致します。」
菫が再び頭を下げると、慌てた千寿郎も今度は深く頭を下げた。
千「弟の千寿郎です!すみません、ご挨拶が遅れてしまって…。」
眉尻を垂らしてそう慌てる千寿郎を見ると菫はうずっと体を震わせる。
(……可愛らしい…。)
杏「そういえば君のご家族には報せたのか。」
そう声を掛けられると菫はハッとして千寿郎から視線を外した。