第57章 闘いを終えて
「杏寿郎さん、もう無理は」
杏「父上、こちらは婚約者の清水菫さんです。鬼舞辻を斃したら一緒になろうと約束していました。結婚を許して頂けませんか。」
槇寿郎は結局体を起こしてしまった杏寿郎を再び寝かせた。
槇「許すも何も、お前が選べ。俺にどうこう言う権利など無い。」
杏「それでは駄目なんです。俺は父上に認めて貰いたい、祝って頂きたい。きちんと家族に戻りたいのです。」
(杏寿郎さん…。)
それを聞いた槇寿郎は眉尻を下げた。
槇「それはお前が言う台詞ではない。俺が許しを乞うべきだろう。」
杏「…………何を、」
杏寿郎は槇寿郎がそんな事を言う必要は無いと心から思っていた為、目を丸くして固まった。
槇「杏寿郎、すまなかった。本当に…、すまなかった。」
槇寿郎はそう言うと、ベッドに横たわって目を見開く杏寿郎に頭を下げた。
杏「……頭を上げて下さい。父上が謝る事など一つもありません。」
そんなやり取りを菫が静かに見守っていると、戸の向こうからしのぶが声を掛けて病室に入って来た。