第57章 闘いを終えて
「杏寿郎さん、着きましたよ。すぐにベッドを用意してもらいますからね。」
菫がそう話し掛けると杏寿郎は小さく呻いて薄っすらと目を開いた。
杏「菫、すまない…気を失っていたのか。」
そう言いながら視線を上げると大きな目を目一杯見開いた。
杏「父上!!!」
槇「あまり大声を出すな。傷に障る。」
槇寿郎は静かに諭すとしのぶが案内した病室に杏寿郎を運んだ。
ベッドの脇まで来ると槇寿郎は先に菫の肩から腕を外させ、一人で杏寿郎を支えながらベッドに横たわらせた。
杏「………父上。」
杏寿郎の意識はしっかりとしていた。
しかし、寝て休んで欲しかった槇寿郎は眉を顰めた。
槇「大人しく寝ていろ。」
杏「いえ、」
杏寿郎はそう言いながら上体を起こそうとする。
すると菫は青ざめながらそれを止めた。