第56章 最終決戦
し「無一郎くん…!」
怪我人を診て回っていると隊士がしのぶを呼び、酷い怪我を負っている無一郎の元まで案内した。
無「胡蝶さん。」
痛ましい姿の無一郎は怪我に反してけろっとしていた。
しのぶは適切に止血出来ているのを確認すると一先ず息を吐く。
し「鴉から聞きました。上弦の壱を斃したと。頑張りましたね。」
しのぶはそう言うと無一郎の頭を優しく撫でた。
一方、菫は知っている最低限の応急処置を隊士達に施しながら駆け回っていた。
(あれ程強い鬼に溢れていたのに予想よりずっと沢山の剣士様が生き残っていらっしゃる…薬の効果だわ…。)
「失礼致します。」
菫はそう言うと隊士の側に膝をつき、自作の薬を肩の傷に塗った。
隊「痛ッ…ありがとう…。」
「いえ。他に痛むところはございませんか。」
菫が顔を近付けると隊士はギクッと体を揺らす。
菫の頭巾は何時の間にか脱げていたのだ。
大きな目でじっと見つめている菫は返答がない事に小さく首を傾げた。
「無いようでしたら失礼致します。」
そう言うとまた別の隊士の側に座り込み、止血をし、薬を塗り、簡単な処置を行ったり、しのぶを呼んだりしながら対応を続けた。
(杏寿郎さん…あと少しです…あと少し、日が出るまで…どうか…ご無事で……。)