第56章 最終決戦
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し(血の匂いがする。ここは何処?)
誰とも合流出来ていないしのぶは眉を顰めながら近くの戸に手を掛けた。
そっと中を覗き見てみると、ボリボリと音を立てながら食事をしている鬼、童磨が背を向けて座り込んでいた。
童「ん?」
しのぶの気配を察知した童磨が振り返る。
童「あれぇ、来たの?わあ!女の子だね!若くて美味しそうだなあ。後で鳴女ちゃんにありがとうって言わなくちゃ。」
しのぶの額に青筋が浮かんだ。
そんな表情に構わず童磨は帽子を取って挨拶をする。
し(『頭から血をかぶったような鬼だった。』)
最愛の姉、カナエの最期の言葉が頭に浮かんだ。
し(『にこにこと屈託なく笑う、穏やかに優しく喋る。』)
女「た…、たす、助けて…助けて…!!」
しのぶは助けを求める声にハッとし、童磨の近くに居た女性を助け出した。
そして少し離れたところにふわりと着地すると女性に優しく微笑み掛ける。
し「大丈夫ですか?」
そう訊くも浅い呼吸を繰り返して返事をしない。
そんな二人を見ている童磨は『わあ!速いねぇ、柱なのかな?』などと緊張感のない事を言っている。
女「はっ…、はっ…、」
次の瞬間、女性は体中に傷を負い、吐血してドシャッと崩れてしまった。
既に斬られていたのだ。