第54章 嫉妬
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三人は鬼に遭遇せずに見廻りを終えると、いつも通り風呂に入って食事を取った。
その後、杏寿郎は善逸と伊之助に鍛錬のメニューを言い渡し、自身は睡眠を取りに自室へ向かった。
明日の朝早くから緊急柱合会議があるからだ。
「同じ時間帯に眠るのは久し振りですね。」
杏「うむ!」
杏寿郎は自室前に着くと、綺麗にした羽織りを運びながら付いてきた菫をくるりと振り返り、それを受け取った。
杏(む。)
そして、菫の肩越しに廊下の曲がり角をちらりと見た。
杏「…菫、少しだけ抱き締めても良いだろうか。」
杏寿郎は小さな声でそう訊くと、赤くなって小さく頷いた菫を優しく抱き寄せた。
使っている石鹸は同じ筈なのに香りは違う気がする。