第54章 嫉妬
杏「これも駄目だろうか。」
「…え?」
菫が質問の意味を理解出来ずに首を傾げると、杏寿郎は善逸の頭に触れていた手を引っ込める。
杏「君は我妻少年にも嫉妬するのかと訊いた。」
それを聞いた菫は顔を赤くし、善逸はげんなりとした。
すれ違いの理由を悟ったからだ。
「男性相手には致しません…。」
菫がそう小さな声で伝えると、杏寿郎はほっとしたような笑みを浮かべた。
杏「そうか!それは良かった!!」
―――
日暮れ前になると炭治郎と蜜璃が起きた。
二人は上弦と交戦した直後の為、耀哉から今晩は休むようにと言われている。
もう自身の中で折り合いをつけていた菫はそんな蜜璃に自然に接し、仲良く話した。
杏「…………。」
それは喜ぶべき事であるのに何となく惜しい気持ちになってしまい、杏寿郎は自身の感情に眉を顰めた。
杏(俺は嫉妬している様を見たいなどと思ってしまったのだろうか。そんな事を思っていれば菫に愛想を尽かされてしまう。)
そう思うと杏寿郎は切り替えて見廻り前の食事を食べた。
杏「では行ってくる!!」
「はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
炭「鍛錬頑張ります!」
蜜「お気を付けて〜っ!」
見送り組の返事を聞くと、杏寿郎は明るい笑みを返し、伊之助は杏寿郎に首根っこを掴まれたまま暴れ、善逸は禰豆子と留まりたいとごねた。
杏「行くぞ!!」
その声と共に杏寿郎は伊之助を解放し、善逸を追い立てるようにしながら出発した。