第54章 嫉妬
杏「羽織りをありがとう。いつも感謝している。」
優しい声音を聞くと、菫は少し肩の力を抜いて杏寿郎の大きな背に手を回した。
「お役に立てているのなら嬉しいです。」
杏「はは、君は相変わらず謙虚だな!」
杏寿郎はそう笑いながら体を離すと、菫の頭を撫でながら襖を開いた。
杏「では失礼する。菫もゆっくり休んでくれ。」
「…はい。」
菫ははにかみながら杏寿郎が襖を締めるまで見届けた。
(ふぅ。)
心の中で息を吐いてから自室へ向かおうとした時、足が止まった。
赤い顔の蜜璃がいたからだ。
それも杏寿郎からは見えていたであろう位置に立っていた。