第54章 嫉妬
(杏寿郎さんがそんな風に思われるなんて…。)
杏寿郎は菫が余りにも呆然とするので、居心地悪くなって抱き寄せた。
「…杏寿郎さん……。」
杏「幻滅したか。」
そんな言葉に菫は慌てて首を横に振る。
「驚いただけです。幻滅なんて、そんな…。」
杏寿郎はその返事を聞いて息を吐くと菫をしっかりと抱き締め直し、頭を撫でた。
杏「君がこうして遠くへ出掛けてしまうのなら、もう甘露寺の頭は撫でない。」
「それはもう、」
杏「俺の為でもある。」
杏寿郎の頑なな声を聞いた菫はただ杏寿郎を優しく抱き締め返した。
そうして菫は心理的にも物理的にも自身を追わせ、杏寿郎の気持ちを更に強くさせてしまったのだった。