第54章 嫉妬
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杏(……。)
炭治郎と蜜璃を寝かせ、二度寝していた伊之助を起こすと、四人は昼餉を取り始めた。
しかし、空気が重い。
菫が自身の膳を出さず、その上感情に蓋をしたような無表情で部屋の隅に待機していたからだ。
杏「菫、」
そう話し掛けようとすると善逸がぶんぶんと首を横に振る。
杏寿郎は善逸が特別耳がいい事を知っていたので、何か自身に分からない事を感じ取って教えてくれたのだろうとは分かった。
しかし、菫の事となると納得したくなくなる。
菫の感情を引き出してきたのは杏寿郎だ。
菫への接し方は善逸より誰より分かっていると自負していたのだ。
杏「菫、何かあったのか。」
杏寿郎がそう問うと菫は目を合わせずに軽く頭を下げる。
「いえ。」
待っていてもそれ以上の言葉が返ってこない。
杏寿郎は時間を取って話した方が良いと判断すると一旦追求するのを止めた。