第49章 進めたい関係
(この状況…二人切りの自室、お布団の上で…、私が欲していることは…。)
途端に頭が痺れ、ぞくっと体が震える。
杏「…菫?」
常にではないとは言え、杏寿郎は菫の固い面を完全に崩す事が出来る唯一の存在だ。
我儘を言え、甘える事さえも出来た。
そんな杏寿郎の腕の中に居る無知な菫は今、非常に厄介な生き物になっていた。
「…私も杏寿郎さんが欲しいです。今改めて状況を確認し、自身の気持ちに目を向けてみましたが、杏寿郎さんが欲しくて堪りません。」
杏寿郎の何を、とは分からずに言わなかったが、菫は無意識に杏寿郎に体を擦り寄せた。
菫は無知故に、その気持ちや体の変化が口付け以上のものに繋がる事を理解しないまま、心許せる杏寿郎に全て話してしまったのだ。
杏寿郎は菫の気持ちが自身のそれに追い付いていないのではと思っていただけだった。
ただ手強いのだと思っていた為に、この返しは予想外で衝撃的で、そして酷く杏寿郎を動揺させた。
杏「…っ」
菫が愛情表現をするように恐る恐る杏寿郎の首に頬擦りをすると、杏寿郎はこそばゆい刺激にぞくっと体を震わせた。