第49章 進めたい関係
杏「待ってくれ。菫、それは、」
困った様に腕の中を見ると、菫が熱を孕んだ瞳で見上げる。
杏寿郎に指摘されてこの状況を意識した菫は、文字通り杏寿郎自身を欲してしまったのだ。
杏「…こんな事をしては、」
『駄目だろう。』と言おうとしたが、菫はよく知らずにこの行動を取ったのだと確信していたし、先程まで恥で酷く体を縮こませていた事を思い出すと指摘するのも憚られた。
しかし、菫は熱っぽい瞳で求めるように杏寿郎を見つめ続けている。
杏(………頭がどうにかなりそうだ。)
杏寿郎がそう思う一方で、欲すれば杏寿郎が喜ぶと思っていた菫は首を傾げた。
(…なんだか妙だわ。杏寿郎さん、何故喜んで下さらないのかしら…。)
菫は『言葉だけでは伝わらなかったのでは』と心配になって、杏寿郎をしっかりと抱き締め直した。