第49章 進めたい関係

「…杏寿郎さんは…先程の私の発言をどう思いましたか。」


そう真っ直ぐに訊くと、背を撫でていた大きな手が止まる。

杏寿郎は菫の頭に優しく頬を寄せながら考えるように視線を上へ遣った。


杏「そうだな…。まず、とても驚いた。だが君の真っ直ぐな目を見て、俺の気持ちを汲んで言ってくれただけなのだと分かった。なので恥じなくて良い。」


菫は淫らだと思われていなかった事にほっとした。

しかし、杏寿郎の言葉はまだ続く。


杏「ただ、この様な状況でもそこに君の意志が全く無かったのは、正直なところ面白くないと感じた。思いが通じ合っても、俺ばかりが君を欲している。」


つまり、こんな状況下でも菫が自身を欲しがる気持ちに全くならなかった事で、杏寿郎は寂しさに似た感情を抱いたのだ。


ただ淫らだと判断されたかどうかだけ訊こうとしていた菫は動揺から固まった。


(杏寿郎さんばかり…私を欲している…？)


なんとか頭を働かせ、自身がこの状況で杏寿郎に何かを求めたか考えてみた。